感情の取り扱い事例
スタッフの「裏切り」も、
夫の「裏切り」も同じ課題だった…
嫌なことには目をつぶって、見ないようにしてきた受講生に、嫌なことを見るとどんなマズイことが起こると考えている?と尋ねると受講生は「どうしようもなく嫌な気分になってしまう。怖い」と言うので、ABC理論に当てはめて一緒に考えてみた。
受講生の思考の癖を感情の構造、ABC理論で考えると、以下のようになる。
A(出来事) | 嫌な面、ネガティブと感じること |
B(認知) | 見たら怖い思いをするから見るべきでない、 嫌だと感じるものは無視するべきだ |
C(結果や感情) | 何も見ないから怖くないけどトラブル発生 |
そこで、B(認知)の書き換えを試みる。
B(認知)は今回、私から指定した。
A(出来事) | 嫌な面、ネガティブと感じること |
B(認知) | 嫌な事実は私の気分を犯さない。 それどころか事実の全てを直視できる力が 私にはある。 |
C(結果や感情) |
新しいBを使うとどうなるかといった実験なので、Cはやってみないことにはわからない。B(認知)は癖だから、放っておけば今まで通りネガティブなものには目をつぶって受講生は生きていくことになる。これからもずっと。
新しいB(認知)をインストールするにあたり、受講生には2つのことを意識するよう伝えた。
ひとつめはすべてのことに陰と陽があることを意識すること。良いばっかりも、悪いばっかりもない。必ず両面あると心得ること。
ふたつめは敢えて嫌なものを見るように心がけること。嫌なことを放っておくと、嫌では無くなるのではなく、さらに嫌さを増したトラブルとなる。嫌なことはあなたの気分を犯さない。嫌なことと気分を分けて考えること。
まずは受講生が経営する会社のスタッフそれぞれの良い面と悪い面から書き出すことを次回までの宿題にした。受講生は「そんなこと、やったことがない…」と言っていたが、それじゃ人は育たない。良い面を理解した上で、改善点や課題を明確にするほどスタッフは育つものだ。そもそも人には成長欲求があるから、この会社で働くと成長できると分かれば、その会社の大きな付加価値となる。逆にこの会社では成長できないとなると、それは退職の理由に充分なり得る。
受講生は妙に張り切っていた。繰り返し起こっていた嫌なパターンの本当の理由が明確になった感じがしたのだろう。このB(認知):『見たら怖い思いをするから見るべきでない、嫌だと感じるものは無視するべきだ』は、受講生が長年、無意識的にやり続けてきたものだ。無意識の領域だからこそ、自分だけでは課題を見つけられなかったが、その思考の癖が繰り返し起こるトラブルの根幹だ。
ただ、生まれた時から上記のような思考だったわけではなく、学習して身につけた思考の癖だから、学習して書き換えることができる。
「繰り返す現実には緩めるべきB(認知)がある。」ですねぇ〜!
と今まで繰り返してきた苦労の理由はこれだと手応えを感じたようで、嬉しそうに講座会場を出て行った。
長年つぶっていたもう片方の目も開けそうだ。受講生はやっと両目を開けて自分の人生をハッキリと見ることができるだろう。ただただ闇雲に嫌な面から逃げるのではなく、良いところも悪いところも事実を見て始めて、嫌だとわかった上でどうするか、どうしたいか、どうすべきかといった選択する力がついていく。
嫌な面を見ることを恐れる必要はない。見ないまま進むより、数段落ち着いて人生の選択ができるようになっていく。そうやって思い描いた理想の人生にどんどん近づいていく。