積み上げてみたものを台無しにしてしまう思考の癖とは


感情の取り扱い事例
【親への腹いせのために生きていいの?】

「立つ鳥跡を濁さず」の意味は、「跡始末をきちんとし、居なくなったあとがきれいであるようにすべき」といったもの。その対義語を調べてみると、「後ろ足で砂をかける」や「後は野となれ山となれ」となるようだ。

というのも、
今回の受講生の悩みは「積み上げてきた全てを台無しにしてしまう」というもので、つまり「立つ鳥跡を濁さず」どころか、「後ろ足で砂をかける」ことを繰り返しているという。

受講生は男性だけれども細かいところによく気がつく、礼儀正しい人物だ。なので「後ろ足で砂をかける」行為をやることが私には想像し難かった。

「台無しにしたかった」と考えるとどうでしょう?
と尋ねると、優秀な彼はハッとした様子で以下の話をしてくれた。


わかりました。
私はきっと親への恨みを晴らしているのだと思います。
というのも、自分が子どもの頃から両親は仲が悪く、よく喧嘩をしていました。私は子どもなりに仲良くなるよう働きかけましたし、親の役に立とうと頑張っていたと思います。
けれどある日、父は家を出ていき、残された母と私だけの生活が始まります。
母は生活することに必死で、父がいる時以上にイライラしていました。振り返れば、両親は幼かったというか、大人になりきれてなかったのだと思います。そんな両親のせいで私の人生はこうなった…という思いが強くあるのです。親があんな風じゃなかったら、私はもっとちがったはずという無念さがずっとあるのです。

と言いながら涙で言葉にならなくなった。

つまり、両親への恨みを晴らすように、
「私の人生がこうやってダメになったのはあなたたちのせいだ!
あなたたちの育て方がまずかったから、今の私はうまくいかないんだ!!!
どうだ?お前たちが間違っていただろ?」
と、ダメなのは両親なことを証明するために全てを台無しにしている。
そういう思考の癖があったってこと?

受講生は涙を拭きながら、何度も頷いた。


そうだったんだ…証明したかったんだね。
今は「両親のせいで自分の人生はダメになった」と解釈していることを存分に味わうことが大事になる。それが彼の本当の思いだから。「あの時もそうだった」「この時だってそうだった」と過去のことを書き出すのもいいだろう。いい歳して親のせいにするなんて…と封印するのは良い手ではない。ずっと封印してきたからこそ、無自覚に台無しにしているのだから今は解放することが大事だ。

まずは思う存分味わいましょう。40年以上、そう考えて生きてきたことを自覚しましょう。
それが宿題。そしたら、あなたの人生に対するあなたの意志がはっきり出てくるはずです。