話し続ける人々


感情の取り扱い事例
批判を恐れて身につけた話し方

話をしていると相手が伝えたいことがダイレクトに伝わってくる。それは普通のことじゃないの?と思われた人もいるだろう。思いのままに伝えたいことを言葉にしているのなら、普通だ。しかし、時に人は、言葉にしない思いのために話をしている場合がある。
例えば、絶対にYesと言わせようと思って話をしていると、話している内容より、Yesと言わせたい思いが伝わってくる。
例えば、面倒だなぁ…と思いながら話をしている人は、やはり内容より面倒くささの方が伝わってくる。

受講生は途切れることなく話をする癖を持っていた。語尾が少し長めになり、次の話題につながっていく。いつの間にか話題も変わっていたり、こちらが口を挟む隙間がないといった感じ。

基本、コミュニケーションは50:50で成される。このバランスが崩れると良いコミュニケーションは続かない。自分が言いたいことを伝え、相手も言いたいことを口にする。相手の意向を聞き、自分の意向を聞いてもらう。この「50:50」は言葉数や話している時間だけではない。思いのボリュームといったことも含まれる。言葉数が少なくても伝えたい、大切なことを口にしていれば気持ち的には50をキープするだろうし、たくさん話をしていても本人の納得度合いが低ければ50を割り込むだろうからやはりコミュニケーションは続かない。

受講生の話し方は立て板に水といった風ではなく理路整然と、しかし口を挟む余地なく自分の不幸を話し続けるといった具合だった。内容より、私はその話ぶりが気になって受講生の話を止めて尋ねた。

何を恐れているの?

受講生は黙り、自分の心の内をしばらく見つめたあと、

批判されることを恐れてると言った。

そうだよね。人が口を挟むことがないように話を続けているのは、批判を恐れているからだよね。だから、批判されそうなことは先持って見つけてはどんどん話をしていく。会話というより一方的な語り。それでは人との繋がりは作れない。孤独を感じるでしょう?と尋ねる私に、受講生は素直に、少しうなだれ気味にうなづいた。

受講生は「自分はきっと批判される」と思い込んでいて、批判されることは自分がダメなことの証で、それを避けようと必死に話続ける。そういった話し方がになっているようだった。

今回の受講生のように、話し続ける人がいる。話し続ける人たちは何かを恐れている。相手の話を聞けないのは恐れからだ。そんな話し方では、50:50を成さないので批判こそされなくても人は離れていく。そうなると孤独を感じるので、より一層、話が途切れて人が離れることがないように話を続ける。これでは悪循環だ。

落ち着いて!あなたが受講しに来ていることを私は歓迎している。そして、この講座に参加していること自体を、変わりたいといったあなたの自発性の現れだと理解しているダメなことをダメだと言ってくれる人がいることは大切なことだ。それなのに、助言やアドバイスも批判と受け取り、自分には価値がないと言われているように感じているのは「自分」であることに気づこう。世の中には人をコントロールする目的で批判してくる人はいるが、この講座はそういう場ではない。落ち着いて!

受講生にはゆっくり話をすることを宿題にした。2週間後、講座に現れた受講生は見違えるように落ち着いていた。

宿題をやった感想としては、
✔️話すスピードをゆったりと意識しただけなのに驚くほど自分の心がゆったりとしていたこと、
✔️批判は私に価値がないことの証明にはならないと繰り返し、自分に言い続けたことで、人の話をゆったりした気分で聞くことができたこと、
✔️ゆったりした気分で話を聞けたので、相手の真意がよくわかったことなどを話ししてくれた。
GOOD!よくチャレンジできました!

人は痛みを避けようとして、痛みを増大させてしまっていることがある。生きていれば、痛むことはよくあることで、それは避けては通れない。無駄な痛みを負う必要はないが、痛みなく生きていくことはこの先も無いはずだ。だとしたら、痛みを避けるのではなく痛みから早く回復する術を持とう。その方が健康度が高い。これからも痛いことはあるぞ!というと、笑顔でうなずいていた。

人からの批判ばかりに目を向けていた受講生にはやらなくちゃいけないことが山ほどある。さぁ!やっていきましょう。そして、痛みをコーピングする術を得ていきましょう。強い人とは、痛まない人ではなく、痛んでも早く回復し、何度でも立ち上がっていく人のことを言うと思うんだよ。