繰り返し起こる「裏切り」には緩めるべき認知があった


感情の取り扱い事例
スタッフの「裏切り」も夫の「裏切り」も同じ課題だった…

繰り返し起こる現実には緩めるべき認知(B)がある。これは講座の中で繰り返しお伝えしていることのひとつだ。

まず、人生に繰り返しおこっている出来事に気づくことが大切になる。意外とパターンで繰り返し起こっているのに本人は気づけないからだ。
例えば子どもの頃、いつも比較されていた近所の子に負けないように一生懸命やったのに、認めてもらえなかったという過去がある人が、現在40歳を過ぎて、一生懸命仕事をしているのに認めらないと言っていれば、それは同じことが繰り返している可能性がある。
例えば、2ヶ月で5キロ痩せたのに、若い頃2ヶ月で17キロ痩せた実績をだした自分と比較して、ヤル気を失っていると言った場合、そういうことが過去になかったか確認する必要がある。「そういうこと」とは、実績を出しているのにも関わらず、それを自分が認めずヤル気そのものを失ってしまうパターンだ。
出来事そのものが同じケースもあれば、心の動きや人間関係などのパターンが同じケースもあり、様々な角度からパターンがないかをみる必要がある。

今回の受講生は、「裏切られる」といったパターンを繰り返していた。経営者である受講生が相談したかったことは、会社のスタッフが裏切りを繰り返すといったものだった。例えば、横領するスタッフがいたり、会社の女子社員のボスのような存在となり、社長ではなくその社員の顔色を伺うような状態になっていたり、勝手に会社の方針を変えて顧客に伝えていたり…といったものだった。
管理能力がないと言えばそうだが、そこまで次々と起こるだろうか。私には解せない。そこで、過去にも「裏切り」はあったか確認すると、父の裏切り、夫の裏切り、子どもの裏切りと受講生の人生では、「裏切り」が繰り返されていた

受講生は自分の子どもがまだ小さい頃、夫と離婚をしていた。なぜ、その夫との結婚を決めたのかを尋ねると受講生は、「良い面しか見なかった。まずいかも…といったところはあったが、全て目をつぶっていた」と答えた。恋愛しているときは大概そうかもしれない。良い面ばかりを見て、懸念材料は目をつぶる。

しかし、受講生は話を続けた。
「私は全てそう。映画でも嫌なシーンや怖いシーン、ドキドキするシーンは目をつぶり、耳をふさぐ。そして、そういった見たくないシーンが終わると一緒に映画を見ている人から肩を叩いてもらい、続きを見るんです。」

これは珍しい。本来、感動は積み重なるほど大きくなる。ドラマなど、最終話だけを見て感動することもあるが、やはり第1話から積み重ねた方が感動は大きい。いろんなシーンが思い出されてジーンとくるものだ。そうじゃない?と受講生に尋ねると、「確かに」とうなづいた。

いつから、恐れるようになったんだろうね?
私に質問に、受講生は小さい頃の父母の喧嘩の話をしてくれた。父母の喧嘩は激しく、父は母に手を挙げていたので、母を守らなければ!と思いつつも何もできず、当時の受講生にとってはただただ怖いものだったという。

怖いもの、嫌なものは見ないことに決めたんだね。それは幼少期の受講生にとって生きていくための工夫だったとも言える。しかし、子どもの頃の生きていくための術が、現在のトラブルの原因となっていた。当時と違って、嫌なことも怖いことも主体的に取り扱える大人になっても尚、目をつぶるといった選択だけでは立ち行かなくなって当然だ。

起こることには全てに陰と陽がある。全てにだ
例えば、素直なスタッフがいるとしよう。素直なことは良いことだらけに感じるかもしれないが、素直ゆえに上司に限らず、同僚や部下、お客様といったいろんな人の意見を素直に聞いてしまうとしたらどうだろう。
一方、頑固なスタッフがいるとしよう。頑固は取り扱いが面倒で、素直な人の方がスタッフとしては良さそうだが、正しいやり方を頑なに守ってくれるといった安心感がある。頑固ゆえに融通は効かないが、安定感があるものだ。
こんな感じで、ある一方だけが良いということはなく、大概のことは一方で良くて、一方で悪いものだ。

ちなみに経営者である受講生に、スタッフの良い面と悪い面は?と質問すると、「良い面は言えるが悪い面は考えたこともない」と言う。それでは、スタッフを成長させることはできない。受講生は、良いところ同様に悪いところも見る力をつけなければならない。でなければ、正しいジャッジはできないはずだ。

人が選択する際や判断に迷った際、考えるべきは両面だ。
Aという選択肢の良いところはここで、悪いところはここ。
Bという選択肢の良いところはここで、悪いところはここ。
といった感じで、両方の良い面と悪い面を抑えた上でなければ選べないはずだ。

受講生に事例を出してみた。
ダイエット中にも関わらず、食べ放題に誘われたとしよう。以前から一緒に行こうと約束していた食べ放題だ。さてどうする?と尋ねると受講生は間髪入れずに「間違いなく、私は食べ放題に行くしか選ばない」と言ったが、こういった出来事にも良い面と悪い面がある。なんだと思う?と尋ねながら、ひとつひとつ書き出してみた。結果は下記だ。

良い面 悪い面
食べ放題に行く 美味しい!
仲間との時間を持てる
太ってしまう
食べ放題に行かない 仲間との共通の時間や話題が持てない。
付き合いが悪そう
ダイエットは順調

そして、良い面と悪い面に改めて点数化してもらった。良いと感じるものはプラスの点数で、嫌なものはマイナスで点数をつける。そして、それぞれの行動の点数を出す。すると、以下となった。

良い面 悪い面
食べ放題に行く 美味しい!
仲間との時間を持てる
+8点
太ってしまう
-7点
+1点
食べ放題に行かない 仲間との共通の時間や話題が持てない。
付き合いが悪そう
−4点
ダイエットは順調
+6点
+2点

得点が高い方がメリットが大きい行為なので、選択すべき行為という結果になる。受講生の選択は迷うことなく「食べ放題に行く」だったのに、なんと「食べ放題に行かない」方の得点が高くなったのだ。
驚きを隠せない受講生。メリットとデメリットの両方から確認すると、選択が変わってしまったのだ。

受講生は早速、元夫の点数化を始めようとした。いやいや、問題はそこではない。なぜ、嫌なことを見ようとしないかだ。嫌なことを見るとどんなまずいことが起こると考えてる?と尋ねると、受講生は「どうしようもなく嫌な気分になってしまう。怖い」と言う。

そういった認知があるのね。では、認知の書き換えを行いましょう!
と、私はホワイトボードにABC理論を展開させた。

続きは次回!