別れた夫に子どもを会わせたくない


感情の取り扱い事例
夫婦としては失敗したかもしれないが
親としてはまだ結果は出ていない。

受講生は子どもが1歳に満たない時に家を出た。
世間的な体裁ばかりを優先して、家庭では話が通じない夫との将来に希望を持なかったからだ。

子どもがいるから家を出ることにかなり悩んだが、この子の子育てを考えても出ることを決意し、夫は離婚にまだ応じてくれないし、今後の教育費や生活費に不安があるものの、家を出てよかったと話をしてくれた。

続けて、「夫が子どもに合わせてくれと連絡をしてくるのが本当に嫌だと言う。心の底から嫌だけれども、子どももお父さんに会いたいだろうから渋々、月に1回程度会わせているが、そこに連れて行き、自分が夫に会うのも嫌だし、また連絡があると思っただけでげんなりする」と訴えた。

リアリティが強い女性の恋は上書きだ。ロマンティストな男性と違って、昔好きだった感情を持ち続けたりはしない。それどころか、下手すると付き合っていたことを人生の汚点とさえ感じている女性は少なくない。

どうしたらいいんでしょう?やっぱり夫に会わせるべきでしょうか?

と尋ねる受講生。

そうね。夫婦としてはダメだったが、母として父としての結果はまだ出ていない。例えば、入学式や卒業式、成人式や結婚式といった節目には両親でお祝いし、子どもの成長を親として応援していく関係をやっていくことが大事だと思うけど、どう?

私の質問に受講生はしばらく考えて、ポツポツと言葉にしていった。

「私が家を出ることに時間がかかったのは、自分のことではなく、子どものことを考えたから。男の子だから、父という存在はやはり必要じゃないのか?しかし、この父ならいらないんじゃないか?とたくさん悩みました。あぁ…でもやっぱり、会わせないとダメですか?私は会いたくないです。」

受講生からは、会わせたほうがいいかもしれないけど、会わせたくないといった葛藤が見える。

会わせなければならないことはない。会わせないこともできるでしょう。しかし、息子が中学生や高校生になったら、今はインターネットがあるし、こっそり探して会うことはできる。こっそりどんなふうになっているかわからない元夫に会わせるのって怖くない?それに大人になるまで子どもは考えるんじゃないのかな。どうして僕には父がいない?自分の父はどこにいる?父はどんな人?って。そんな思いを子どもにさせたくないから、あなたは家を出ることを悩んだんだよね。

女は子どもを昔の夫に会わせることを嫌う。家を出て間もない頃は顔も見たくないから自然なのかもしれない。だけど、子どもを主体に考えたら、ここはあなたが大人になるべきだ。子どもにとって、父も母も親であることには変わりない。両親は離婚してしまったが、二人とも二人なりの関わり方で自分を愛してくれていると実感させることが大事だと思うけど、どう?あなたの嫌悪感を優先させる?

受講生は諦めたようにうなづいた。

この出来事が1年前。それから受講生はコンスタントに学びを深めていった。そして先日、受講生は嬉しい報告をしてくれた。子どもの2歳の誕生日は互いの家族も一緒にお祝いをしたそうだ。

「不思議でした。あんなに嫌で家を出て、離婚も成立し、縁は切れるものと思っていました。ですが、こうやって一緒に息子の誕生日を祝えるなんて…。息子は本当に嬉しそうで。私たちは距離がある方がうまくいくのかもしれません。彼が父として頑張ろうとしてくれているのも今ではよく理解できます。息子の喜ぶ顔を見ていたら、息子から父という存在を排除しなくてよかったと心から思えます。」

よく踏ん張りましたね。優秀な母親を持つ子どもは幸せです。
次はあなたを支えてくれる人との出会いね。と私は声をかけた。

受講生はひとつ成長した。嫌だと分かった上で、父親に会わせる選択をしたことが彼女の自信にもつながっていっている。こういった魅力的な女性を世の中の優秀な男たちが放っておくわけがない。
受講生の母としての、女としての人生はまだ終わってない。
いや、始まったばかりだ。これからもきっといろんなことが起こるでしょう。しっかりトレーニングを続けていきましょう!