自己確認のために繰り返す失敗

なぜか間違った選択をしてしまう。
誰にだってあるだろう。
だけど、それが同じパターンを持っていて、自己確認のための無意識の作用であるとしたらどうだろう。

今回の受講生はベテランの経営者だ。
敏腕で時代を読む力もあり、収益に関して全く問題がなかったが、人事採用ではいつも苦労していた。

講座の中で、採用を迷っている人がいるという。
詳しく面接の様子を聞くと、仕事時間に賃金、保険に至るまで先方の自己主張が強すぎるし、自分の技術やライセンスの値打ちと世間の価値観とにギャップがありすぎる。接客業であることを考えると、適性ではないし、どう考えても採用じゃない。

どこを悩むのか尋ねると、理由は二つあった。
ひとつは、会社的にあったら助かるようなライセンスをひとつだけ持っていること。
もうひとつは、面接に時間を要してしまったことへの罪悪感があるという。

もう一つ尋ねた。

「この方を採用して、試用期間中にやっぱりダメとわかる可能性は高いよね。やめてもらわなければならなくなるよね。すると、あなたはどんな気持ちになるの?」

すると受講生はしばらく考えてから答えてくれた。
私は人を見る目がない
私は人を育てることができない。

これが自己確認なのだ。
自分は人を見る目がないことを確認する。自分は人を育てれないことを確認する。
そのために、受講生は適性がない人を採用しようとしているのだ。冷静に考えれば、受講生も不採用だと答えははっきりしているはずだ。なのに、迷いが生じるのは、無意識の自己確認

経営者がセルフのB(自己概念)を緩めなければならない最大の理由はここにある。
経営を通してセルフのB(自己概念)を確認することをやる。
全ては「わたしは〜な人間だ」ということを確認して安定するためだ。
自分が知っている自分であることを確認できないと不安なので、側から見たらどんなにネガティブなことでも人は自分が思っている自分だと自己確認できるとほっとしているのだ。
今回は人事だったが、例えば、お金の管理や裁判沙汰になるようなトラブル、健康を害するまで働くことなどによって自己確認している人は少なくない。

受講生は人間関係への苦手なセルフのB(自己概念)を確認しようとしていた
しかし事前に相談してくれたおかげで、受講生は失敗を繰り返すことなく自己確認の構造を自覚することができた。これなんだ。だからセルフのB(自己概念)を見る必要がある。
ポジティブなセルフのB(自己概念)であれば粘り強くなる可能性は高まるし、ネガティブなセルフのB(自己概念)なら失敗すると分かりきっていることに手を出してしまう可能性だってあるんだ。どちらにしろ人は人生に何度も自己確認を繰り返してるんだ。

あなたがあなたをどう思っているか。
セルフのB(自己概念)が思っている以上にあなたの人生に影響を与えているとしたら、
どう思う?