私たちが本当に大切にしているものは


感情の取り扱い事例
わたしの味方だったんだ…

弊社の受講生の特徴は、素直で一生懸命。
社会的に成功していて、よく頑張って生きてきた努力家ばかりだ。

そんな受講生たちを育てた親御さんだから、きっと愛情をもって一生懸命に育てられた方々だろう。

ただ、どんなに愛情をかけても誤解が生じる時があるものだ。

トラウマと言うと身体的、精神的虐待を思い描く方も多いだろうが、決して酷い育ちだけがトラウマになるわけではない。もちろん、トラウマの影響には強弱があるが、愛情がある故のトラウマもある

例えば、親が大切に育ててくれたからこそ頑張れない自分に痛みを感じていたり、親の苦労を知っているからこそ人に助けを求めることに罪悪感を持っていたり、この程度では弱音は吐けないとワーカーホリックになっていたり…。

今回の受講生は「母と和解しました」と話し始めてくれた。

今まで受講生から聞いていた話では、親に対してほとんどのことが事後報告。転職も引っ越しも進学を決める際も。すでに実家を離れているし、普段、親に仕事の話や個人的な話などしない受講生。

この受講生は優秀で、仕事でも仲間とうまくチームを作り、手腕を発揮していたが、この春、移動した先にどうしても話が食い違う上司がいる。今まで通りスムースに仕事が運ばないことが最近の講座のテーマだった。私が話を聞いていてもパワハラ傾向がある上司だと感じていた。

あまりに理不尽なことがあった夜、一人暮らしの家に遊びにきていた母にそのことを相談したと言う。

すると聞いていた母が「あなたは悪くない!」と断言し、受講生が小学校の時の話をしてくれたと言う。

その話とは、
受講生が小学校の時、金魚のブクブクが泡立っていて金魚が苦しそうに見えたのだろう。ブクブクのスイッチを切ってしまって翌日、金魚が死んでしまっていた。その時、母は理不尽にまだ小学生の受講生を叱ったというのだ。受講生は全く覚えていないらしいが、受講生の母はずっと気になっていたのだろう。

「私が理不尽に叱ってしまってから、あなたは自分が悪いのでは?と自分を疑うようになった気がしていたの。あなたは悪くない。自分に自信を持っていい」といった話をしてくれたらしい。

「母は私の味方なんだ!と思いました。」と受講生は涙ながらに話してくれた。

母でもある私は受講生のお母様の気持ちが痛いほど伝わってくる。
親は完璧ではない。生身の人間だ。調子が悪い時もあれば、気分が晴れない日もある。もちろん、楽しく一緒に遊んでやれない日もあれば、イライラして叱ってしまう日もある。
ずっと気がかりだったんでしょう。伝えられて、本当の話ができてよかった。そして、受講生もお母様と貴重な時間を持てて良かった。そう。何があろうがあなたの絶対的な味方なの。素敵なお母様に育てられましたね。

お母様にとって大きな気掛かりとなっていた。お母様はその重荷を下ろすことが今回できた。こんな親孝行はない。そういった意味では理不尽な上司が登場してくれて良かった。

こうやって大切にしている者同士が真につながれることは心から嬉しい。
この出来事の後、親に手助けしてもらうことへの罪悪感や失敗してしまった際に抱いていた「ダメな子」のイメージが払拭されたことも受講生から報告をもらっている。なんともうれしい。

そう考えると、私たちが本当に大切にしたいことは大きなことではなく、親との関係、子どもとの関係、夫婦関係、身近な人との関係性の深さなのかもしれない。