悪習慣をやめたい


感情の取り扱い事例
【悪習慣を断つために必要なことは「許し」】

弊社のリアルな講座では講座後に懇親会をすることが多い。
会場では話せないことや質問が飛び交い、有意義で楽しい時間だ。

今回の受講生は出会った当初から気持ちの良い飲み方をする方だったので「お酒を辞めたい」と言う発言に私は少し驚いた。そう思った理由を尋ねると親類が肝臓を悪くしていたり、老後を考えると少し控えた方がいいんじゃないかと考えてらっしゃるようだ。


「なるほど!あなたはお酒を飲む自分を許せてないのね。
お酒が好きな自分も、お酒を飲む自分もダメだと拒絶している。
そんな自分をゆるしてみてください。」

といった私の発言に「ゆるし???」とクエッションが3つほど浮かんでいるようだった。それにお酒を呑むことを許してしまうと歯止めが効かなそうな自分を受講生は想像したのだろう。うーん…と首を傾げていた。

自分を罰することなく楽しく呑む。呑む自分を許すというチャレンジを!」と宿題にしてその回は終わったのだが、次の講座に現れた受講生がその後どうなったかを報告してくれた。

「家族に話をしたんです。『お酒を飲む自分を許せてない』と言われたと。すると、息子が『お母さんは、もう1杯飲んでいい?とかもう1本開けていい?とか私たちに尋ねるよね。それだよね』と言われ驚きました。そんなことを尋ねているなんて自覚がなかったので。そして、息子に言われたんです。『どんなに有名なラーメン屋さんが近くにあっても、いつでもいけると思ったらなかなか行かない。けど、もう2度と来れないと思ったらがんばって食べるよね。そういうことじゃないの?』と。私はきっと、今日までと自分に言い聞かせて毎日飲んでいたんでしょうね。これですよね。私、許すということが分かった気がします」

そう!それ!息子さんは良い例え話をなさった。
こういったことはアルコールに限ったことではない。ダイエットや先延ばしにしてしまう癖など、やめたいと思っている悪習慣は基本、同じ仕組みだ。悪習慣をやる自分を許せない状態にいて、許すともっと悪化してしまうと恐れている

ダメだと思うから気になる
朝は今日こそやめようと考えているが、お昼を過ぎ、夕方になるとだんだんと「今日までいいんじゃないか?!」「明日からやめたらいい」「今日は良いことがあったからお祝いだ」とか「今日はストレスフルだったからストレス解消に」など、さまざまな言い訳を自分にしながら「今日まで!」と毎日同じことを繰り返す。そして同じことを繰り返してしまう自分がだんだんダメ人間に思えてくる。抜け出したいと思いつつどんどんハマっていく。

ダメ人間に感じて終わりではない
人は自分をダメ人間に感じる『心の痛み』を消したくて、お酒などのやめたいと思っている悪習慣に手を出す。自分の『心の痛み』を消してくれる手立てが悪習慣なのだ。
この仕組みがわかれば、最初にメンテナンスしなければならないのは『心の痛み』の方だ。人はやめたいと思いつつ悪習慣を実に何年も続けていたりする。「今更、1週間や1ヶ月さらに悪くなったとしても状態はさほど変わらないさ」と肚が決まれば、ゆるしの始まりだ。

悪循環する仕組みに受講生は気づいた
気づいてしまえば8割方緩む。お酒が好きなご自身を受講生は上手に受け入れていくだろう。もちろん時には飲みすぎることがあるかもしれないがお酒との付き合いはゆるすほどに上手になっていく。そして、『ゆるし』の成功体験をなさるので他のものへの転用もできるようになっていく。ご自身のなかの許していない部分に気づき、受け入れ、ゆるすといった良いスパイラルに入っていかれるだろう。

やめなければと思いながら、やめれないのは辛い
やめれない自分を許してみる。お酒が好きな自分や甘いものが好きな自分、嫌なことを先延ばしにする自分を許す。これは「諦める」に近いのかもしれない。そんな残念な自分に抗うのではなく受け入れると、固執していた自分を不思議に振り返れるぐらい解放されるものだ。

イソップ寓話の『北風と太陽』に似ている
やめなければいけないと思っている悪習慣が『北風と太陽』でいうコートだ。北風(自分に辛く当たること)で吹き飛ばそうとしても却ってコートを強く握りしめる。しかし、太陽で照らす(そんな自分を受け入れる、ゆるす)と自然とコートを脱ぎたくなる。

ただ、それは今までやったことがないやり方だから恐ろしい。もちろん許し始めた当初は抑圧の解放となるので、酒量や食べる量は増えるかもしれないが、そんな自分をも許してあげるとだんだんと対象のものに興味がなくなっていく。

「いろんなご自身を許せるようになっていかれますね」と声をかけると、美人さんな受講生のお顔がさらに輝いて見えた。

私たちはなぜ、自分に辛く当たってしまうのだろう
一生付き合っていく自分にもっと優しく丁寧に接してあげていいのに…ね。