私は子どもに謝らない!


感情の取り扱い事例
負の世代間伝達とは

「あの時のことを子どもに謝って!と言われましたが、私は謝る気になれない。だって、あの出来事があったから今があるのに…」

いつもは冷静に判断し、理解なさる受講生には珍しい雰囲気で、

「だから、私は謝らない。」
と宣言なさった。

「だから、私は謝らない」宣言の時の受講生が、私には小学生のように感じれたので尋ねてみた。

まるで、「還暦を過ぎた私だってまだ自分の親から謝られてないのに、あなたに謝るなんてしたくない」と言っているように聞こえたんだけど、あなたは親に謝ってもらいたいことがあるの?

受講生はうなだれた。
「実は…」と自分の幼少期、父が暴れて大変だったこと、迷惑かけられ通しだったこと、お母さんが酷い目にあっていたこと、そんな家族の中にひとり居た子どもの自分はどうして良いかわからなかったこと、でも頑張って乗り切ってきたこと、その後も親の面倒や介護でずっと大変だったことなどを話してくれた。

そう。自分の親への恨みを子どもにも向けているのね。私がまだ謝ってもらってないのに、なぜあなたに私が謝らなければならないの!って。
あなたは親に謝って!と言ったことある?と尋ねると、受講生は「どんな酷い目に合ってきたかと恨み言は言ったことがあるが、謝ってとは言ったことがない」と言った。

なら、息子さんは勇気があるわね!良い子育てなさってる。あなたもご両親にあの時のことを謝ってと言ってみたら⁈とアドバイスすると、

言っても謝らないでしょうね…。でも、まだ両親は健在ですし、私が私の想いを口にして相手に伝えるということが大切な感じがします。伝えてみます!

と笑顔でおっしゃって帰っていかれた。

世代間伝達という言葉がある。愛情を受けて育った子どもは大人となり、またその子どもへ、次の世代へと愛情を伝達していくことです。が、負の連鎖も起こる場合があります傷ついた自分の負のイメージを子どもに投影し、自分を傷つけた親との同一化をしてしまう。このパターンには親になった自分自身への攻撃が存在します。その攻撃の根っこをよく見て、癒していく必要があるのです。

受講生の中には傷ついた幼い自分がまだ居るのでしょう。「だから、私は謝らない」といった時の口調はまるで幼い子のようでもありました。

受講生はご自身の親に謝ってと言ってくるでしょう。その時の思いや思い出した出来事を糸口にして、過去の傷の癒しが始まっていく予感がします。息子さんに謝らなかった自分が不思議に感じれる時もすぐにおとづれるでしょう。

傷は明るい太陽の元にさらし癒す必要があります。すると、傷を庇いながら生きる必要はだんだんとなくなっていき、さらに存分にご自身のパワーを発揮されると思います。次回が楽しみでなりません。