夫との喧嘩が絶えない 前編


感情の取り扱い事例
夫にイライラする!

繰り返す現実には緩めるべきB(認知)がある」と伝え、「何か繰り返してるものある?」と私からの質問に受講生が語ったのは夫との喧嘩だった。結婚して4年、子どもが生まれて2年、つまらないことでいつもいつも喧嘩を繰り返してしまう

今朝だって…と受講生は話し出した。
私は少し早く出なければならなく、子どもを保育園に連れて行く準備などをバタバタしていると、朝食の食器を洗っていた夫がどんどん不機嫌そうになってきた。すると、「俺ばっかりやってる気がする」と言ってきた。「俺ばっかりが何もかもをやっている感じで嫌だ」と。私は全くそういう風には思っていないのに。「またでた!面倒臭いな…なんでそう取るの?」朝から疲れ果ててしまう。

子どもが生まれてきてから、こういった喧嘩ばかり…。もう、こんな夫は要らない。起業して一人で育てていくから大丈夫!とどこかで離婚を考えるほど。こんなことにもB(認知)がありますか?

繰り返す現実はまるで、歪んだB(認知)に気がつくまでB(認知)に気づけとばかりに同じようなパターンを繰り返す。受講生は、夫が不機嫌になる→受講生は面倒くさく思う→言い合い→喧嘩を繰り返していると説明してくれた。

繰り返す現実があるときには投影図を使ってB(認知)をさぐっていく。
なぜなら、現実は私たちの思い込みがまるで、手で小さい狐を作ったら壁に大きく映し出される影絵のように壁に映し出されたものだから。現実に投影されているものを投影図を使って深めていくことでB(認知)に気づくことができる

私たちが現実とおもっていることは、実は事実とは異なることが多い。なぜなら、出来事に対する各人それぞれの解釈があるから。だから同じ出来事を同時に体験しても、人によって結果や感情、思い出が変わってくるのだ。

ここで少しだけ感情の構造について
4nessコーピングはアルバート・エリス博士が認知行動療法のベースとして提案した感情の構造(ABC理論)をベースにしている。ABC理論とはそれぞれの頭文字から作られていて、AがActivating event(出来事)、BがBelief(認知)、CがConsequence(結果や感情)となり、Aの出来事がCの感情に直接影響するのではなく、B(認知)を通してC(感情)があるといったもの。つまり、同じ出来事を同時に複数名で体験しても、B(認知)が違えば、C(結果や感情)も違ってくるというものだ。
出来事と感情の関係は思っている以上に薄い。B(認知)は丁寧にいうと「出来事を自分にどう説明したか」といったもの。

繰り返す現実は、夫が不機嫌になり喧嘩が始まるというパターン。
Bを探るには「なぜなら〜」に答えて深めていく。そこで、「夫が不機嫌になるなんて許せない。なぜなら〜」に答えてもらった。Bはshouldで表現されるので「〜でなければならない」や「〜であるべき」と言った言葉を使う。すると「夫はサポートすべきだ」と出てきた。さらに「夫はサポートするべきだ。なぜなら〜」に答えてもらうと、「質問とは違う答えかもしれないのですが、頭に出てきたのは…」と躊躇しながら、受講生は「私はもっと大切にされたい」と出てきた。

言いながら、驚き項垂れる受講生。なぜなら、使えない!要らない!と思っていた人に「大切にされたい」と思っていたなんて考えてもみなかったらしい。実は不機嫌そうにされることも、イラっとされることも、受講生にとっては「自分が大切にされてない」ことに感じ、寂しさを覚えていたなんて。。。

続けて、「大切にされたいと思っている人は、自分は大切にされる価値がある実感が常にある人でしょうか、それともない人でしょうか。」という質問をすると快活な受講生は、「大切にされる価値はない」とおっしゃいました。そうなんです。大切にされる価値が私にはないんじゃないか⁈と危ぶんでいるのです。だから、この受講生の場合、「私が大切に扱われるかどうか」に強いアンテナが立っていて、いつも「この人は私を大切にする人かどうか」を無意識にチェックしているのです。ご自身のことを『大切にされる価値がない』と自分が思っているから。これがセルフのB(自己認知)となります。

このケースでは、怒りや呆れた感情は二次感情で、一次感情は「大切にしてほしい」といった思い。つまり、怒りを感じていたと思っていたが本音の部分では「こんなに頑張っているのに、大切にされてない」と感じていて、大切にしてほしいと願っていたのです。本人が自分の本当の思いに気づけてないので、それを伝えることもできてなかったわけです。

怒りの裏には悲しみがあり、喜びの裏には愛があると言います。感情の仕組みを知ることは、自分自身を知ることでもあります。

自分は大切にされたかったんだと意識できれば、2つのことを1つの心構えでやる必要があります。

やる事ひとつ目は、本当の思いを伝えること。
あなたが機嫌が悪くなったりイライラすると、私は大切にされてないように感じると夫に伝えるのです。

やる事ふたつ目は、どういうことをやってくれたら私は大切にされていると感じ、ご機嫌でいられるのかを具体的に伝えること。例えば、畳んだ洗濯物をタンスに入れてくれると嬉しいとか、抜いだ靴下を洗濯機に入れてくれると助かるなど、具体的に伝えます。

ひとつの心構え
やってくれたこと自体を重視して、クオリティはひとまず無視すること。当然、女性がやるように男性は上手はできません。女性がこうやったほうが効率的だと感じ作ったルールを夫は知りませんから、やってくれただけでまずは御の字とすること。最初からクオリティまで求めない。この心構えで向かわなければなりませんね。

こう伝えると、受講生は非常に難しい顔をした。
それは、負けたことになりませんか?

そう。女性の中には男性に勝ち負けを意識する人が実は少なくありません。その原因と対処といった続きは次回。