自分の顔がイヤ


感情の取り扱い事例
整形したいけど…

自分の顔がイヤ、自分の匂いが気になる、自分の身体が嫌…
特に思春期には大小の違いはあるにしても、皆、感じたことがある感情だ。思春期や青年期は自分を作っていくプロセス。そこには、人との比較や思い描く理想と現実の開きなど様々なポイントがあるが、その全てをどう解釈するかによって方向性は変わってしまう。

受講生は「自分の顔がイヤだ」と言う。目は学生の頃に二重の整形はしたが、鼻も顎も歯も全てが気になり、鏡を見るといつも整形しようかどうか悩んでしまうが資金は足りないし、そんなことしていいのか⁈とも考えていると全てが進まなくなる。

受講生は正直、アイドルや女優になるような美人ではないかもしれないが、清潔感のある凛とした顔立ちだ。能力も高いし、人から好かれるタイプでもある。

いつぐらいから?なぜ?と問うと、中学生ぐらいから一重を嫌い、アイプチを欠かさなくなり、大学生に入ると同時に二重にし、その後もずっと気になっている。そもそもは何がきっかけだったか思い出せないけど、中学生ぐらいからかな。

あなたがそう解釈し、そう思い込んだ
受講生は小さい頃から人の意見に合わせてしまうような特徴があり、調整する力もあった。例えば、友人があなたを妬んで「顔がね…」と話していた会話を聞いてしまったとする。思春期はそういったことがよくあるが、そういった時に記憶として残るのは強いショックと傷つき。「私の顔ってダメなんだ。顔さえ変われば人から何か言われることはない。」という解釈をしてしまったんだね。

思春期や青年期は自己が確立していない分、特にわかりやすい容姿を重要に感じる。アメリカ合衆国の発達心理学者であるエリクソンは、青年期を心理社会的モラトリアムの時期であると指摘し,この時期の課題としてアイデンティティの確立を掲げている。

アイデンティティとはシンプルに言うと「私が私である私の性質」で、自分がどういう性格でどんな人間かを理解していること。このようなアイデンティティの感覚はその後、現実社会の中でどれほど有効かを試す実験を繰り返した後,自分が社会で認められる存在であるという心理社会的アイデンティティが感じられることで確立していく。そして,アイデンティティが確立されることで,青年は自分なりの価値観や人生目標を持ち,自己の主体性や独自性が感じられるようになる。

つまりこの若い受講生は、自分は社会で認められる存在であるという心理社会的アイデンティティが感じられてなく、まだ自己を確立している段階で、自分の顔が社会で認められないと感じることで、本来、社会で認められるはずの自分の本質を発揮することをこの顔が邪魔していると思っている。自分は社会で認められてないという不安定な状態だから、顔が変われば安定するはずだといった可能性を残している。本当だろうか?

親からもよく気にしすぎと言われました。でも、私は気になるんです。

いつもは静かな受講生から発せられた強い語気に驚いたと同時に、露呈した感情に本当の課題が明確化した。

あなたが持って生まれた臆病さと冒険心が影響しているね。冒険心は自分を広げようとするが、臆病さはブレーキをかけている。その状態を守るためには頑なに顔を変える必要があると考えてきたんだね。そういった臆病さと冒険心で、理想を超えた幻想を描き、今のままでは自分は世間では認められないダメな人間だということにしているね。そうしているんであって、顔さえ変わればものすごくイケるはずだと考えている。だから、整形はしない。
整形しても誰も認めてくれなかったら、自分は本当にダメな人間だと落ち込まなければならなくなるし、整形したことにずっと罪悪感も持たなければならない。そこもわかっている。だから、顔が変われば素敵な女性になるのに…といった幻想を持ち続け、顔さえ変われば大丈夫なはずといった可能性の中に居続けている。
本当の課題にに直面化しないためには、整形はしない。整形するお金は稼がないという状態にあなたが保っている。よくわかっているはずだよ。現実に直面化し、現実を受け入れることは避けてきている。


あなたがこの現実に気づくようになったら、ガラッと変わる

要は「顔がダメだからだ」と思い込むことで現状維持している顔さえ変われば…ということに固着することによって現状の理由を全てそこに置く。すると、自分が変わる手立ては整形しかないと言い聞かせれば、自分自信が変わる必要はなくなるから。変わる努力を放棄し、努力しても報われなかった時の傷つきを回避している

記録を辿ってみましょう。それをあなたが選んでいる可能性がありますね。親も含めた周りの人たちは認めているにもかかわらず、自分が自分を認めない、そこに居続けたというのは誰が問題ですか?何が問題ですか?

自分⁈

泣きながら、受講生は答えた。親や世間に不快な思いがあるよね。そこに何があるの?大抵、兄弟ばかり可愛がられたという嫉妬や頑張った自分が、自分が思っていたような理解をされなかったことからそういう行動をしている。あなたはその時、可愛くない子だったはずだ。顔のせいにしてひねくれた態度をとっている。そういった自分は世間に認められない人間だということを演じているね。すると、顔が問題じゃなくて、自分がそういう状態をあなたが作っていたんだ。

怖いんだよね。事実に向き合うことが。
自分の境界線が曖昧で、人に境界線を侵されてしまう恐れから、ひねくれた態度を取り、顔が悪いんだと自分を防御している。確かに現代は、整形して顔を変えられる。でもあなたの本質まで変わるわけじゃない。本質は変わらないよ。どれだけ包装を変えても、中身は変わらない。それどころか、見た目を整えた分、中身とのギャップをあなたは感じて、身動きが取れなくなっていく。

すると、あなたがこれから学ぶべき必要があることは何かというとね。
人と自分の境界線を引き、自分を自分で引き受けるというのがあなたの課題ね。変えれないものと、変えれるものを分け、変えれないものを受け入れ、変えれないもの以外を変えていく。

私が大好きな詩をあなたにプレゼントするね。
次回、感想を聞かせてね。

〜ニーバの祈り〜
変えることのできないものを静穏に受け入れる力を与えてください。
変えるべきものを変える勇気を、
そして、変えられないものと変えるべきものを区別する賢さを与えて下さい。

私が好きな順番に並べ替えるとこうなるんだけどね。

変えられないものと変えるべきものを区別する賢さを与えて下さい。
変えることのできないものを静穏に受け入れる力を
変えれないもの以外すべてを変える勇気を与えてください。

ここで、講座は終了となった。受講生は???といった感じで会場を出て行った。優秀な受講生は全てわかっているはずだ。意識化を恐れているだけ。何を感じてきてくれるだろう。次回の講座が今から楽しみでならない。