妻が出て行った


感情の取り扱い事例
あなたには力があるの?

自分の価値が曖昧なために人はさまざまなことで自分の価値を図ろうとする。

例えば、正しくあることや時間や約束を守ると言ったことで。
例えば、資格や学歴で。例えば、連れて歩く異性や持ち物、売り上げの金額や体重のメモリで。

40代後半の受講生は『約束を守る』といったことで自分の価値を図っていた

受講生は憤りを隠さず講座にやってきた。妻が一人息子を連れて家を出て行ったこと、それまでも決してうまくいっているとは言い難い自分のビジネスが更にしぼんでいっていること。
妻に対しても、仕事でのパートナーや仕事先の相手に対しても、約束と違う…と怒りを抱いていた。「そもそも彼らは約束した時間も守れない。だから、ダメなんだ!人として非常識だろ!」と冷静なふりをしながらも怒っていた。

あなたには力があるんだろうか?
私の質問に受講生は反射的に、そしてやはり怒りを交えて「Yes」と答えた。家族を守れず、ビジネスでもうまく行ってない受講生に本当に力があるんだろうか。

本当に力があるの?といった疑惑の質問を私は受講生へ与えた。すると、やはり「ある」と言う。

可能性としては、以下の2つが考えられる。
1、力があると思いたい。
2、力というものを誤解している。

その受講生が持っていなければならない力とは、事実を見る力。セルフの力だ。

事実を見るというのは勇気がいることだ。
自分のコンプレックス、強い面、弱い面、力のある面、力のない面、そういうことに気づく力。つまり、自分に気づく力があるかどうかになる。

セルフの力とは粘り強さや何かを達成しようとする力であり、そのことに関心を持ち続けてやっていく力であり、意志の力と関係する。

40代も後半にして、今の状態(妻は子を連れて出ていき、ビジネスもうまくいっていない)であるということは、今までの自分の人生がどういうものだったかに向き合わないとけない
今のあなたは、過去のあなたの決断の結果だ。

人生を洞察し、観察し、自分に気づくことができないといったケースだと結婚した配偶者はそりゃ離れていく。「あなた」という存在が我が家にないもの。そして、そういう血筋を持っている子どもはふわふわした生き方にならざる得ないから、妻は母としての選択として夫から離れる。一人息子は自立できない可能性が多分にある。お父さんは本来、生き方のモデルであるべきで、力がないお父さんでは子どもに生き方を教えられないから。

セルフは育っていないので、あると思いたいといった生き方で生きている。

確固とした自分がない
それはあまりにも不安定なので『約束』を自分の価値の軸にする。約束が守られることで自分を支えようとしている。だからこそ、約束が守られなかったことを軽く流せない。一方、自分は人との約束を必死で守ろうとする。
 自分の価値を、約束を守ってくれたかどうかで判断するなんてナンセンスだ。『価値』と『約束』はあまりにも土俵が違う。それ程までに彼は自分が脆弱だったと言っていいかもしれない。生きるのはきっと大変だっただろう。

このままだと彼から人は離れていくだろう。受講生はセルフの力が育ってない故に自分に自信がない。人は自信がない人といるとこちらまで不安定になるので避ける。いつのまにか周りに人がいなくなる。

そうなっていない?

受講生はじっと聞いていた。私の声はBGMで、自分の人生を振り返っていたのかもしれない。絞り出すような声で「確かに」とだけ言った。「力はある」と断言した時の怒りというか、反発心とも言える態度から、受講生は見る見る頼りなげに小さくなっていった。

静かに帰って行った受講生だが2週間後の講座に現れた姿はどっしりとしていた。前回の受講の時とは随分と違う。

話を聞くと、自分を振り返り、自分がいかに自信なく生きているかがよくわかったと言う。「力がないことに薄々気づいていた。だから、力があるように振舞えても本当のところはどうしていいかわからず、自信がなかった。」出て行った妻にも「自分が悪かった。申し訳なかった。自分に力をつけたい。力がつくまで時間をください。」といった話をしたと報告してくれた。

そして、「しっかり力をつけたいです。息子にとって男としての良い生き方のモデルになりたい」と続けた。

あぁ…受講生は気づき、受け入れたんだと思うと私は心から嬉しかった。辛かっただろう。事実に向き合うことはセルフの力をつける最初のテストみたいなもの。ここを突破しなければ先にはいけない。が、辛い。

見えるもの、見たいもの、見たくないものの3つがあるとすれば、見たくないものの中に大きなヒントが隠れている。私からのキツくて強い、見たくないボールを受講生はしっかりと受けた。

さぁ!しっかり鍛錬していきましょう!!!覚悟ができれば、やれないことなどない。この講座はあなたの役にたつ。やればやるほど力がついていく。