職場の人間関係がうまくいかない 【最終】


感情の取り扱い事例
職場の人間関係がうまくいかない。 【最終】
激変した受講生

受講生は職場の人間関係でつまづくことを繰り返していた。(詳細は職場の人間関係がうまくいかない【1】から。)

成熟の「型」をやってみることに、相当な抵抗を示し、渋々「やってみます…」と答えた受講生が2週間後、受講にやってきた姿は目を見張るものがあった。

前回の受講後、受講生は考えた。
「ゆかりさんに言われたことを振り返り、私が上司の立場だとしたら、私みたいな人が入ってきたら⁈と考えたら正直しんどいなと感じた。じゃぁ、どういう人が入ってきたら嬉しいか?とも考えたが今の私がとてもそれをできるとは思えなかった。

なので、取り急ぎ私は「自分を大事にしてもらおう!」にしがみついていると感じていたので、「自分は大事にされなくていい!」というスタンスで出勤してみた。すると、大事にされるという変な現象が起こった」と言う。

手放したら入ってくる!というコーピングあるあるが起こったんです!と嬉しそうに、しかし不安げに話をしてくれた。

事態はすっかり好転したのになぜ不安げだったかというと、受講生は新しい認知に不慣れな状態だったからだ。それは自然なことで、今まで長年やってきた慣れ親しんだパターンではないことが起こっているのだから、例え良い変化だとしても人は居心地の悪さを感じる。と同時に、例え嫌な過去だったとしても慣れ親しんだパターンに戻りたくなる。望む自分に成れたのに、以前の自分に戻りたくなるなんて意識ではなかなか想像できない。「私はこういったう人だ」という自己認知(セルフのB)はアイデンティティの一部で、そこが変化するのは実は恐ろしいことでもある人が変わりたいと言いながらなかなか変わらないのは、変化した後のこの恐怖を感じるからでもある。

受講生は、戻っても良いことはないことはわかっているので、新しい価値観に居続けようと努力していると言っていた。

新しい自分になったら終わり!じゃない。新しい自分は慣れ親しんだ自分ではないので、変な感じがするのだ。枕や布団が変わって寝付けないような状態と同じだ。それが例え、せんべい布団から羽毛布団に変わって、頭ではより良く眠れるはずだと思っていても慣れるまでは寝付けない。加えて、少し時間が経つと昔のせんべい布団が懐かしく感じられる。そして、せんべい布団の方がぐっすり眠れるような感じがしてせんべい布団に戻りたくなる。これが揺り戻しだ。決して良い思い出ではないにしても、あの頃が懐かしく思い出される。そして実際にせんべい布団に寝たときにはっきりとわかる。あぁ…羽毛布団がいい!と。

人の変化はこうやって以前に一度ゆり戻ってハッキリ「ここにはもう二度と戻りたくない」と意識できて、望む自分をやってみたり、また戻ってみたりしながら徐々に中庸に落ち着いていく。揺り戻しが起こって、こっちがいいと意識ではっきり選択できるところまでが人の変化のセットなんだ。戻って初めて意識できることやわかることがある。だんだんと中庸に近づくほどに、シチュエーションによってどちらでも選べるような自分になっていく

「認められたい」を手放し、その職場でうまくやれるようになっただけでも十分激変した受講生は、さらに営業をすることを提案されていた。営業という仕事は嫌う人も多い職業のひとつだとも思うのだけど、その提案に対して受講生は「ありがたいなぁ」と言っていた。雑用を「私の仕事じゃない」と不満に思っていた受講生が、営業という新しい仕事のオファーに対して感謝の感情を持っているなんて。私は「感謝が大事」なんてハウツーは教えてはいない。しかし受講生の口からは自然に感謝の言葉が出ていた。やるからには結果を残したいとも。

「認められたい」を捨てるチャレンジは、受講生にさらに多くの「認められる」という事実を運んでくるはずだ。どんどん仕事は楽しくなり、好きな自分にたくさん触れる機会を得ることができるだろう。
「仕事を楽しむ」「自分という人生を楽しむ」とはこういうことだと私は思う。